★作品の添削例★

タイトル『交感イメージ・アナライズ』

■作者よりのコメント(作品概要など)■
ショートショートです。短編賞に応募してみようかと思って書いたのですが――。
よろしくお願いします。

 


■作品本文■

「今日は順子ちゃんのブレインにアクセスしてみましょうか」
 助教授、早川緑の高い声がゼミ教室に響いた。
「皆さんの机の上にある二千万ビット三六〇〇チャンネル・ハイパー・ヘルメットを装着して下さい。スイッチをオンにしたら、チャンネルは一方通行イン≠セけにして下さいね。良いですか、順子からのウエーブを受け止めるだけですから、チャンネルはインです。
繰り返しますが、双方向スイッチは必ず切って下さいね。さもないと、前回のように大混乱になりますからね。あ、順子はアウトチャンネルだけにしてね。あんたまでインにしたら何もなりませんからね」
 説明しつつ早川緑は前回の失敗を思いだし、背中を震わした。
 ここは某私立大学の心理学ゼミ。二十三世紀になって考案された脳細胞パルス分析コンピューターによって、イメージ・アナライズを行おうとしている。
 これは通称ハイパービット交感ヘルメットを使用し、二十世紀末に開発されたポジトロン・コンピューターと連動して脳の分析を行なう物だ。
 ポジトロン・コンピューターは、放射性同位元素が陽電子(ポジトロン)を放射する性質を応用して、キセノン等で脳の各分野の機能を細分化して分析するものであるが、二十三世紀になると、この技術は飛躍的に発展し、ペンフィールド等が大雑把に百ほどに分けた大脳皮質のそれぞれの分野をさらに数百にわけリサーチできるようになった。いや皮質だけではない、間脳や海馬や大脳辺縁系や視床下部や扁桃体等もである。
 例えば二十世紀末では前頭葉は前頭前野と運動性皮質が一七に区分されただけであったが(ローランドの区分)、この前頭前野だけでも三十五億の細胞が有り、それが数百の記憶ブロックに分析可能になった。ここは高等思考の分野であるから、他の体感分野は言うに及ばない。
 この素晴らしい装置は特に脳外科、脳神経科の治療に於いて威力を発揮したが、現代では、精神科の治療機として使われ始めている。
 この装置を被り、患者に昔の記憶を辿らせたり、様々な想像を働かせて、奥に隠されている病巣を発見し治療するのである。だが実際は、なかなか旨くいかない。何せイオン伝達というあやふやな伝達方式をとる不安定な脳細胞の軋みによって生まれたあやふやな人間心理であるからして、余程のベテラン医師でないと駄目だ。自己分裂している患者には、簡単に騙されてしまう。
 セールスマンが専用ソフトでシミュレーション訓練した時は、理路整然とし、見事に患者の病巣が見付かったのに、緑が使うと、いっかな成果が現れないのだ。
 しかし導入に賛成した緑は、何とか成果を上げようと、今日もこの機械を使うことにした。前回は、正美の空想にすっかり惑わされ、全員がエイリアンに滅茶苦茶にやっつけられ、えらい目に遭わされてしまった。
 後で考えれば、途中でスイッチを切れば良かったのだが、正美のパルスがすごく強く、完全にサイキック操りにかかり、全員が思考の流れから脱け出せなくなってしまったのだ。
 おまけに双方向スイッチを切らなかったんで、生徒同志のパルスが相乗効果となって、どいつがどいつを襲ってるのか分からず、悲鳴を聞き付けた用務員の小父さんが、慌てて電源を切ってくれなければ、全員、廃人になっていたかもしれない。
 苦い経験を活かして、今回は一方通行にした。パルス増幅度も最低にセットした。今回もエイリアン分析というので、気が重いことは重い。

(後略 全体で14キロバイト程度)

 

★添削見本★

メールタイトル:【添削結果】スキルアップ・スピード添削

−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・
eブックランド スキルアップ・スピード添削より
 添削結果のお知らせです。
−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・

eぶっくらんど様(登録いただいたペンネームです)

 11月1日にお送りいただきました、あなたの作品に対する添削結果です。
厳しい意見もあるかと思いますが、作品がより良く、読者が楽しめるものになるようにとの思いを込めてアドバイスを作成いたしました。
 あなたの作品が、より素晴らしいものになるように、この結果をご活用ください。

 なお、このメールが届きましたら、受領確認のために、以下の線で挟んだ部分を切り取って、返信にてご回答くださいませ。

―――――――――――――――――――――――――――
 添削結果を受領しました。
   お名前:(お名前をご記入ください)

  この添削結果を、会員用WEBページにて公開することについて
         可   否(どちらかをお選びください)
    実際に公開する場合には、前もってご連絡差し上げます。
―――――――――――――――――――――――――――

では、添削結果です。

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃     ☆eブックランド☆                  ┃
┃    スキルアップ・スピード添削              ┃
┃      ――添削結果――               ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
題名:『交感イメージ・アナライズ』(1回目) 体験コース
受領日:11月1日 

 短編に仕上げられていますが、少し急ぎすぎの傾向があります。内容的には、中編以上の長さで表現したほうが作品が生きてくるのではないでしょうか?
 書き慣れた印象もあり、文体にもコメディとしてのおもしろさが見られます。
 アドバイスを参考に、作品を仕上げていってください。

 次は、冒頭の部分を細かく見ていきます。

>「今日は順子ちゃんのブレインにアクセスしてみましょうか」
  助教授、早川緑の高い声がゼミ教室に響いた。

 ここまでで大学であることは分かりますが、早川助教授が男女いずれなのか、年齢も分かりません。服装、容貌、それに教室に何人ぐらいの学生がいるのかも書きましょう。
 そうしないと読者は情景をイメージすることができません

>「皆さんの机の上にある二千万ビット三六〇〇チャンネル・ハイパー・ヘルメットを装着して下さい。スイッチをオンにしたら、チャンネルは一方通行イン≠セけにして下さいね。良いですか、順子からのウエーブを受け止めるだけですから、チャンネルはインです。繰り返しますが、双方向スイッチは必ず切って下さいね。さもないと、前回のように大混乱になりますからね。あ、順子はアウトチャンネルだけにしてね。あんたまでインにしたら何もなりませんからね」

 ここで、この物語がSFだと分かりました。となると、現代とどのくらい違うのか、どのくらい機械文明が進歩しているのか、ここに登場する機械類の外観を描写しなければなりません。

> 説明しつつ早川緑は前回の失敗を思いだし、背中を震わした。

 ここから説明に入ってしまいます。そうすると読者は背中が震えるような失敗≠ェ何なのか見当がつかずに置いてけ堀¥態になってしまいます。説明は可能な限り後回し、読者が物語世界をイメージしやすいように、できるだけシーン描写にスペースを割く。これがエンターテインメントの冒頭部分の書き方の鉄則です。

> ここは某私立大学の心理学ゼミ。二十三世紀になって考案された脳細胞パルス分析コンピューターによって、(中略)
>(中略)自己分裂している患者には、簡単に騙されてしまう。

 この辺りの説明までで、たいていの読者は投げ出しますし、賞の選考でしたら、選考委員は落選の箱に投げ込みます。この説明が必要不可欠だったとしても、もっとずーっと先送りすることができます。

>前回は、正美の空想にすっかり惑わされ、全員がエイリアンに滅茶苦茶にやっつけられ、えらい目に遭わされてしまった。

 なぜここのシーンを冒頭にしないんでしょうか。このシーンからスタートすれば、もっと格段に面白い話になります。

> 後で考えれば、途中でスイッチを切れば良かったのだが、正美のパルスがすごく強く、完全にサイキック操りにかかり、全員が思考の流れから脱け出せなくなってしまったのだ。

 エンターテインメントにおいては、こういう回想は可能な限り避けなければなりません。このエピソードが冒頭に来ていれば非常に面白い話になったはずなのに、残念です。というわけで、以降の添削は行ないません。このシーンを冒頭にして物語全体を書き直してください。

==添削結果 終わり==


 eブックランド 
 スキルアップ・スピード添削 事務局